全部の歯をインプラントにするデメリットは?メリットや治療法も併せて解説

この記事の監修者
島田 健一郎
岐阜駅インプレ歯科
2024/3/27
2025/5/2
#インプラント

全部の歯をインプラントにした場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
いくつか治療法があるなか、どれが自分にとってベストなのか判断するのは難しいですよね。
特にどのようなデメリットがあるのかは、誰しもが気になる点だと思います。
自分に適した治療法を判断するには、それぞれの治療法についてデメリットやメリットといった特徴を理解することが重要です。
近年ではインプラント治療が流行していることから、この記事では全部の歯をインプラントにするデメリットやメリット、具体的な治療法などについてご紹介します。
また、費用相場や治療ごとにおすすめな人の特徴についても紹介しております。
この記事を読むことで、全部の歯をインプラントにするのが自分に適しているのか判断しやすくなるでしょう。
「自分に適した治療法を判断できるようになりたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 2.62-6.ズレずに安定する
- 6まとめ
1.全部の歯をインプラントにするデメリット

全部の歯をインプラントにする場合、下記のようなデメリットが考えられます。
全部の歯をインプラントにするデメリット
- 歯周病のリスクが高まる
- 対応可能な歯科医院が限られている
- インプラントで治療できない場合がある
- 手術時間が長くなる
- 治療費が高額になる
それぞれ具体的に解説します。
1-1.歯周病のリスクが高まる
インプラントは天然の歯とは異なり「歯根膜」がありません。
歯根膜とは歯根と骨をつなぐ役割がある組織のことで、周囲の組織に血液を供給する働きがあります。
歯根膜がないインプラントの場合、天然の歯と比べて供給される血液の量が少なくなります。
その結果、インプラントを埋め込んだ周辺組織の抵抗力が弱まり、歯周病(インプラント周囲炎)のリスクが高まってしまうのです。
全部の歯をインプラントにするとなれば、インプラントを1本埋め込む場合よりも、歯周病(インプラント周囲炎)のリスクは高まるといえるでしょう。
歯周病(インプラント周囲炎)になると、歯茎の腫れや出血などの症状が現れ、最悪の場合インプラントが脱落してしまう恐れがあります。
歯周病(インプラント周囲炎)といったトラブルを防ぐためにも、日頃からセルフケアを徹底したり、定期メンテナンスを欠かさず受けたりすることが重要です。
1-2.対応可能な歯科医院が限られている
インプラント治療に対応している歯科医院は多くあります。
ただ、インプラント治療に対応している歯科医院であっても、全部の歯をインプラントにする治療には対応していない場合があるのです。
そのため歯科医院を探す際は、あらかじめ全部の歯をインプラントにする治療に対応しているかを確認しておく必要があります。
場合によっては、自宅から離れた場所にある歯科医院でないと治療を受けられない可能性もあるでしょう。
1-3.インプラントで治療できない場合がある
患者さんの顎骨の状態や健康状態などによっては、そもそもインプラントで治療できないことがあります。
「顎骨の量が極端に少ない」「高血圧や糖尿病といった疾患がある」などの場合、インプラントで治療できない可能性があります。
ただ、上記のようなケースに該当するからといって、必ずしも全部の歯をインプラントで治療できないわけではありません。
顎骨の量が少なくても、骨造成をおこない骨の量を増やすことで治療を受けられるようになる可能性があります。
また、疾患があったとしても、医師から許可が下りれば治療を受けられることもあるでしょう。
※骨造成:骨を増やすためにおこなう手術のこと
1-4.手術時間が長くなる
基本的にインプラント治療は埋め込むインプラントの数が多いほど、手術時間も長くなります。
インプラント1本を埋め込むのにかかる時間は合計でおよそ30分程度です。
インプラントを複数本埋め込むとなれば、その分手術時間は長くなり、患者さんの負担も大きくなるでしょう。
また、骨造成といった追加の手術が必要になれば、さらに治療時間が長くなります。
1-5.治療費が高額になる
インプラント治療は原則保険が適用されません。
つまり、費用は全額自己負担となります。
インプラント1本あたりの費用はおよそ25万円〜60万円程度です。
全部の歯をインプラントにする場合、歯があった箇所すべてに1本1本インプラントを埋め込むわけではないにしろ、複数本インプラントを埋め込むため、費用は高額になってしまいます。
できるだけ費用を抑えたいなら、医療費控除といった工夫をすることがポイントです。
インプラント治療の費用を抑える方法については「インプラント治療の費用相場は?内訳や費用を左右する項目も解説」の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
2.全部の歯をインプラントにするメリット

全部の歯をインプラントにする場合、下記のようなメリットがあります。
全部の歯をインプラントにするメリット
- 口元の審美性を高められる
- 顎の骨が痩せてしまうのを防げる
- 天然の歯に近い噛み心地を得られる
- 虫歯に悩まされることがなくなる
- 消化器の負担を抑えられる
- ズレずに安定する
- 治療前と同じように話せる
それぞれ詳しく解説します。
2-1.口元の審美性を高められる
保険適用外の総入れ歯であれば、ある程度高い審美性があります。
ただ、顎骨と一体化しているインプラントの審美性にはかなわないでしょう。
より自然で美しい口元になるのが、全部の歯をインプラントにするメリットのひとつです。
2-2.顎骨が痩せてしまうのを防げる
歯を支えている顎骨は刺激がないと、次第に痩せていってしまいます。
全部の歯を総入れ歯で補う場合、顎骨への刺激が少なく、顎骨が痩せてしまう恐れがあります。
インプラントであれば、顎骨に埋め込んだ人工歯根によって刺激が伝わりやすくなるため、顎骨が痩せてしまうのを防げるでしょう。
2-3.天然の歯に近い噛み心地を得られる
天然の歯で噛む力を100%とした場合、総入れ歯の噛む力は10〜20%程度と言われています。
これに対してインプラントであれば、噛む力が80〜90%程度と高く、天然の歯に近い噛み心地を得られます。
総入れ歯だと不安な硬い食べ物でも、インプラントなら安心して食べられるでしょう。
2-4.虫歯に悩まされることがなくなる
インプラントは歯周病のリスクが高まる一方、虫歯に悩まされることがなくなります。
そもそも虫歯は、虫歯の原因菌が生成する酸によって歯のエナメル質が溶かされていくことで発生します。
インプラントの上部構造(仮歯)は、基本的に虫歯の原因菌によって生成された酸で溶かされることはありません。
そのため、全部の歯をインプラントで治療すれば、虫歯に悩まされることがなくなるのです。
2-5.消化器官の負担を抑えられる
口に含んだ食べ物を細かく噛み砕けず飲み込むと、胃腸に負担がかかってしまいます。
インプラントによってしっかりと食べ物を噛めるようになれば、食べ物を消化しやすくなり、消化器官の負担軽減につながります。
2-6.ズレずに安定する
インプラント治療であれば、人工歯根が顎骨に固定されているため、食事の際にズレる心配がありません。
天然の歯のときと同様に食事を楽しめるでしょう。
2-7.天然の歯のときと同じように話せる
総入れ歯の場合、何かの拍子にズレることがあります。
そのズレが原因で話しにくくなる可能性があるでしょう。
また、歯茎や粘膜を広く覆うため、活舌に影響が出ることもあります。
インプラントであれば、総入れ歯のように歯茎を覆うことがないため、天然の歯のときと同じように話せるでしょう。
3.全部の歯をインプラントで治療する具体的な方法

全部の歯をインプラントで治療する場合、下記のような治療法が挙げられます。
全部の歯をインプラントで治療する具体的な方法
- インプラントオーバーデンチャー
- オールオンフォー(All-on-4)/オールオンシックス(All-on-6)
それぞれ詳しく解説します。
3-1.インプラントオーバーデンチャー
インプラントと入れ歯を組み合わせた治療法が「インプラントオーバーデンチャー」です。
数本のインプラントを顎骨に埋め込み、入れ歯と接続させ固定します。
下記、この治療法の特徴です。
インプラントオーバーデンチャーの特徴
- 自分で取り外しできる
- 入れ歯より違和感を覚えにくい
- 上部構造を消耗しやすい
それぞれ詳しく解説します。
3-1-1.特徴1.自分で取り外しできる
インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯を自分で取り外せるためお手入れがしやすいです。
ただ、自分でお手入れができるからといって、歯科医院でのメンテナンスやケアを怠らないようにしましょう。
3-1-2.特徴2.入れ歯より違和感を覚えにくい
入れ歯がインプラントで固定されているため、違和感を覚えにくい点も特徴のひとつです。
従来の歯茎に吸着させて固定する総入れ歯よりもしっかりと固定され、食事や会話の際にズレたり外れたりするトラブルがほとんどありません。
また、入れ歯がズレることで生じる痛みも感じにくいでしょう。
3-1-3.特徴3.上部構造を消耗しやすい
人工歯根で固定されていない入れ歯の場合、噛む力は強くないため、上部構造の消耗は早くないでしょう。
これに対してインプラントオーバーデンチャーの場合は、人工歯根によって入れ歯がしっかりと固定されている分、入れ歯の上部構造(歯の部分)が消耗しやすいです。
3-2.オールオンフォー(All-on-4)/オールオンシックス(All-on-6)
オールオンフォー(All-on-4)は、片顎の骨に4本のインプラントを埋め込み、12本のつながった人工歯を固定する治療法のことを指します。
埋め込むインプラントが6本の場合は「オールオンシックス(All-on-6)」と呼びます。
下記、この治療法の特徴です。
オールオンフォー(All-on-4)/オールオンシックス(All-on-6)の特徴
- 短い期間で治療できる
- 外れることがない
- 場合によっては抜歯の必要がある
それぞれ詳しく解説します。
3-2-1.特徴1.短い期間で治療できる
この治療法では、人工歯根を埋め込んだ当日に上部構造の取り付けが可能です。
通常のインプラント治療の場合は、人工歯根を埋め込んでから、顎骨と人工歯根が結合するまで数ヶ月空けてから上部構造を取り付けます。
これに対して、オールオンフォー(オールオンシックス)なら手術当日から上部構造の取り付けが可能です。
これによって治療期間が大幅に短縮されます。
3-2-2.特徴2.外れることがない
オールオンフォー(オールオンシックス)は、固定式のため基本的に外れることがありません。
外す場合は歯科医師にお願いすることになります。
3-2-3.特徴3.場合によっては抜歯の必要がある
歯が残っていると基本的にオールオンフォー(オールオンシックス)で治療できません。
オールオンフォー(オールオンシックス)は、数本のインプラントと上部構造で片顎全部の歯を補う治療法です。
1本でも自分の歯が残っている場合、たとえその歯が健康であっても抜歯する必要があるでしょう。
4.全部の歯をインプラントで治療する場合の費用

ここでは、先ほどご紹介した「インプラントオーバーデンチャー」「オールオンフォー(All-on-4)」「オールオンシックス(All-on-6)」の費用相場をご紹介します。
・インプラントオーバーデンチャー:50万〜200万円程度
・オールオンフォー(All-on-4):片顎180万円〜360万円程度
・オールオンシックス(All-on-6):片顎250万円〜500万円程度
上記の金額はあくまでも目安です。
実際の費用は治療内容によって異なります。
患者さんの希望や口腔状態などをもとに治療計画が立てられるため、より具体的な費用に関して知りたい場合は歯科医師に相談しましょう。
5.治療法ごとにおすすめな人の特徴を紹介

全部の歯をインプラントにするか、総入れ歯にするか悩まれる方は多いと思います。
そこで、それぞれおすすめな人の特徴を一部取り上げご紹介します。
5-1.全部の歯をインプラントにするのがおすすめな人
下記のような人は、全部の歯をインプラントにする方法がおすすめです。
全部の歯をインプラントにする方法がおすすめ
- 若くしてほとんどの歯を失った人
- 総入れ歯が合わない人
それぞれ詳しく解説します。
5-1-1.若くしてほとんどの歯を失った人
30〜50歳程度と若くしてほとんどの歯を失った方はインプラントでの治療が良いでしょう。
若いうちから顎の骨が痩せてしまうのを防ぐためにも、顎に刺激が伝わりやすいインプラントでの治療がおすすめです。
5-1-2.総入れ歯が合わない人
すでに総入れ歯を使っており、ズレによる違和感や痛みといった不満を抱いている方は少なくないでしょう。
インプラントであれば、違和感や痛みなどが改善される可能性は高いです。
天然の歯のときと同様に食事や会話を楽しめるでしょう。
5-2.総入れ歯がおすすめな人
下記のような人は、総入れ歯を検討してみてください。
総入れ歯がおすすめな人
- 費用を抑えたい人
- 高血圧や糖尿病などの全身疾患がある人
それぞれ詳しく解説します。
5-2-1.費用を抑えたい人
歯を補ううえで可能な限り費用を抑えたいのであれば、総入れ歯がおすすめです。
総入れ歯は保険が適用されるものもあり、保険が適用される総入れ歯であれば15,000円程度で済むでしょう。
インプラントは基本的に保険が適用されず、全額自己負担となるため、費用を抑えることが優先事項なら総入れ歯を選ぶと良いかもしれません。
5-2-2.高血圧や糖尿病などの全身疾患がある人
高血圧や糖尿病などを患っている場合、インプラント手術による身体への負担が大きくなったり、手術後の傷の治りが遅くなったりする可能性があります。
また、疾患の程度によっては、そもそもインプラント治療を受けられない可能性もあるでしょう。
総入れ歯であれば、高血圧や糖尿病などの全身疾患があるからといって、使用できないということは基本的にありません。
全身疾患がある方にも受けやすい治療のため、高血圧や糖尿病などの全身疾患がある人は総入れ歯を検討してみてはいかがでしょう。
もちろん、全身疾患によってインプラントでの治療ができないわけではありません。
症状や対策次第ではインプラントでの治療も可能です。
そのため、審美性の高さやしっかりとした噛み心地などを求めている場合は、インプラントでの治療を検討するのが良いかもしれません。
まとめ
全部の歯をインプラントにしようとする場合、そもそも治療に対応している歯科医院が限られており、治療時には高額な費用がかかるでしょう。
また、治療してからも、天然の歯より歯周病になるリスクが高まるといったデメリットが挙げられます。
一方、デメリットだけではなく「口元の審美性を高められる」「顎骨が痩せるのを防げる」などメリットもさまざまです。
どのような治療法が良いかは、身体やお口の健康状態、自身の求めるものなどによって異なります。
そのため、まずは歯科医師に相談することがおすすめです。
全部の歯をインプラントにする治療に対応した歯科医院は限られており、相談場所を選ぶためにも、まずは歯科医院探しから始めてみてはいかがでしょう。
当サイトではインプラントによる治療が受けられるおすすめの歯科医院を紹介しています。インプラントによる治療を検討しているという方は、ぜひご覧になってみてください。
この記事の監修者

島田 健一郎
経歴
1997年 愛知学院大学歯学部 卒業 大垣市なかの歯科勤務 2000年 みずほ通り歯科勤務 2009年 大手法人の名古屋分院院長 就任 2011年 同法人のエリア(東京・新宿・名古屋)統括院長就任 2016年 同法人の副理事長に就任 2017年 同法人の診療部長として後進スタッフの指導、育成も行う 全国分院のインプラント治療を担当(東京・新宿・池袋・名古屋・滋賀・京都) 2019年 拠点を名古屋に移し、名古屋、三重、池袋のクリニックでインプラント治療を担当 2023年 岐阜で「岐阜駅インプレ歯科」を新規開院
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