マウスピース矯正の種類と違いを解説|おすすめはどれ?
この記事の監修者
三上 智彦
医療法人社団佑健会
2021/7/7
2024/7/18
#マウスピース矯正
歯の矯正方法を調べると、痛みが少なく、取り外しが可能な歯科矯正としてマウスピース矯正を見かけることが多いのではないでしょうか。
しかし、マウスピース矯正に興味を持った方でも、
「マウスピース矯正が気になっているけど、種類ごとの違いがわからない・・・」
「自分はどれを選んだらいいんだろう・・・」
と矯正を踏みとどまってしまう方がいらっしゃいます。
そこで、この記事では、マウスピース矯正を選ぶときのポイントと、マウスピース矯正の種類ごとの違いを解説していきます。
この記事を読むことで、自分に合ったマウスピース矯正の種類を知ることができます。
マウスピース矯正に少しでも興味がある方は必見です。
- 3.1費用
- 3.2適応症例
- 3.3通院頻度
- 3.4治療にかかる期間
- 3.5薬機法の対象かどうか
- 5.1全体矯正を考えている方は
- 5.3国産にこだわりたい方は
- 5.4信頼性にこだわりたい方は
- 6まとめ
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とは、「アライナー」という透明なマウスピース型矯正装置を口腔内に装着することで、歯並びをきれいにしていく歯科矯正治療です。
透明で矯正装置が目立たないこと、金属を含まないことや、脱着可能であることで近年注目を集めています。
詳しくは「今話題のマウスピース矯正とは|メリットデメリット等を解説!」をご覧ください。
需要の高まりとともに、国内外で様々なマウスピース矯正のブランドが立ち上がっています。
2022年5月には、国内大手の配送会社であるヤマト運輸株式会社が国内製のマウスピース矯正ブランドと提携したというニュースで話題になりました。
(参考:ヤマト運輸株式会社)
マウスピース矯正には、治療範囲別の種類分けと、ブランド別の種類分けがある。
マウスピース矯正には、治療範囲別の種類分けと、マウスピース矯正のブランド別の種類分けが存在します。それぞれの場合別での種類について解説いたします。
マウスピース矯正における治療範囲別の種類
マウスピース矯正を利用した治療には範囲別に「全顎矯正」と「部分矯正」の2種類が存在します。
全顎矯正は、フル矯正とも呼ばれ奥歯も含めて歯の全体を動かしていく矯正のことです。
一方で、部分矯正は前歯のみを動かすなど、歯並びを部分的に直す矯正のことです。
全額矯正の方が費用が高く、治療期間も長くなることが特徴です。
マウスピース矯正におけるブランド別の種類
現在、マウスピース矯正には様々な種類があります。1999年にアメリカでインビザラインが誕生し、日本でも2006年にインビザラインの販売が開始されました。
インビザラインに代表されるマウスピース矯正は透明で目立ちにくく、取り外しができるということで2022年現在でも非常に人気の矯正治療です。
そこで日本においても2017年頃から国内産のマウスピース矯正が次々と誕生し、料金の安さを売りにするマウスピース矯正も誕生しました。
それらはLCM(Low Cost Mouthpiece)格安マウスピース矯正ともジャンル分けされています。
マウスピース矯正の種類によって何が変わるのか
マウスピース矯正には、いくつかの種類があり、それぞれに違いがあります。
まずは、マウスピース矯正の種類を比較するときに注目すべきポイントを、5つにしぼって説明していきます。
費用
マウスピース矯正の種類によってマウスピース本体の費用は異なります。
マウスピース作製の手法や場所によってコストが異なることや、矯正計画シミュレーション用の専門ソフトウェアの有無が費用の違いに表れています。
歯科医師の指導の下で行われるマウスピース矯正はすべてオーダーメイドですが、一般的に、歯科医師がマウスピースの形を調整しながら矯正していくブランドは費用を抑えることができます。
自分に合った治療を選択して、お金を無駄にしないようにするためにも、マウスピース矯正の種類ごとの費用を把握しておくことは重要です。
適応症例
マウスピース矯正の種類ごとの適応症例数や適応症例の範囲は、マウスピース矯正を比較するうえで欠かせないポイントです。
自分の歯並びを治療できるマウスピース矯正を選択しないと、矯正がうまくいかない可能性があるからです。
マウスピース矯正すべてに共通して苦手とする歯の動かし方はありますが、マウスピース矯正の種類によってそれぞれが得意としている症例や苦手としている症例があります。
例えば、歯科矯正には、奥歯を含めて歯を動かす全体矯正と、前歯中心に歯を動かすだけの部分矯正がありますが、すべてのマウスピース矯正が全体矯正を行えるわけではありません。
また、マウスピース矯正の種類によって、矯正できる叢生や乱ぐい歯などの程度が異なります。
選択したいマウスピース矯正のブランドがあっても、自分の症状に適応していないと、矯正がうまくいかずお金を無駄にしてしまうので、それぞれマウスピース矯正が「どういった症状」を「どれほど治せる」かを知っておきましょう。
通院頻度
マウスピース矯正の種類によって、矯正中の通院頻度が異なります。
通院頻度は、主に型採りの回数や経過観察の必要性に応じて変わります。
通院頻度が少なければ、通院にかかる交通費を抑えることができますし、歯科医院によって異なりますが、通院ごとに診療がかかる医院であれば、マウスピース矯正に加わる追加費用も抑えることが可能です。
通院頻度が他のマウスピース矯正に比べて多ければ、定期的に歯科医師の観察を受けるので、矯正中の歯が予想外の動きをしても、早く気づくことができ、矯正の計画を迅速に変更することができます。
自分に合ったマウスピース矯正を選ぶには、矯正中の通院頻度も考えるようにしましょう。
治療にかかる期間
マウスピース矯正の種類によって、治療にかかる期間も異なります。
歯科矯正では定期的に通院をしなくてはいけないため、一般的に治療期間が長くなると通院回数も増えていきます。
治療期間に何度通院しても追加の費用をとらない歯科医院もありますが、そうでない場合は、通院のたびに診療費と交通費が追加の費用としてかかってしまいます。
歯科矯正は1年以上かかることも多くあります。
「矯正が思っていたよりもだいぶ長くかかった」
ということが起こらないように、マウスピース矯正の種類ごとにかかる治療期間を把握しておくことが重要です。
マウスピース矯正での治療にかかる期間については、「マウスピース矯正の期間は長い?期間を延ばさない5つのコツ」でも詳しく解説しています。
薬機法の対象かどうか
マウスピース矯正は種類によって、薬機法対象外のものがあることも注意が必要です。
薬機法対象外であると、医薬品副作用被害救済制度の対象外である可能性があるからです。
医薬品副作用被害救済制度は、医薬品等を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害を受けた方に対して、医療費等の給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済を図ることを目的として、昭和55年に創設された制度であり、医薬品医療機器総合機構法に基づく公的な制度です。
(引用:独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
簡単に言うと、治療による副作用によって入院が必要なほどの重篤な健康被害が発生した時に、給付金を受けられる制度です。によって
海外で製造されたカスタムメイド(オーダーメイド)のマウスピースは、日本の薬機法上の医療機器に該当しません。
マウスピース矯正の比較を行うときには、薬機法の対象か知っておくことも大切です。
違いを知ろう!マウスピース矯正のブランド4種類紹介
マウスピース矯正はいくつか種類がありますが、今回はマウスピース矯正の主要な4ブランドを紹介していきます。
以下では、マウスピース矯正の種類ごとの違いがわかるようにまとめた表を記載し、それぞれの特徴を説明しています。
費用 | 適応症例 | 通院頻度 | 治療期間 | 薬機法 | |
---|---|---|---|---|---|
インビザライン | 部分矯正 30~50万 全体矯正 70~110万 |
部分矯正も全体矯正も可能 | 1~3ヶ月に1回程度 | 部分矯正 3ヶ月~1年 全体矯正 1~2年半 |
対象外 |
クリアコレクト | 部分矯正 15~35万 全体矯正 40~90万 |
部分矯正も全体矯正も可能 | 1~2ヶ月に1回程度 | 部分矯正 3ヶ月~1年 全体矯正 1~3年 |
対象外 |
アソアライナー | 20~50万 | 前歯中心の軽度な部分矯正 | 1ヶ月に1回程度 | 数ヶ月から1年半 | 対象 |
アクアシステム | 10~30万 | 前歯中心の軽度な部分矯正 | 2~5週間に1回程度 | 数ヶ月から1年半 | 対象 |
インビザライン
マウスピース矯正ブームの先駆けとして、現在世界ナンバーワンのシェアを誇るのが、インビザラインです。
1999年にアメリカで誕生してから実績を積み上げてきたインビザラインは、マウスピース矯正のなかでもっとも適応症例が多いブランドといえます。
インビザラインでは、治療開始時に歯型をとり「クリンチェック」とよばれる独自のソフトウェアが作り出す3Dのコンピュータ画像を用いて、矯正のシミュレーションを行います。
そして歯科医師はシミュレーションと患者さんの要望をもとに、アメリカにマウスピースを発注します。
患者さんは、届いたマウスピースを7~10日に1度交換することで歯を動かしていきます。
マウスピースは海外で製作されるため、薬機法の対象外になります。
メリット |
・世界でもっとも利用されているマウスピース矯正である。 ・適応症例が最も多い。 ・独自のソフトウェアを利用して矯正シミュレーションができる。 ・通院頻度が少なくて済む。 |
デメリット |
・発注してから届くまでに2週間ほどかかる。 ・薬機法対象外。 |
詳しくは「歯並びでお悩みの方必見|今話題のインビザラインとは?」をご覧ください。
クリアコレクト
クリアコレクトは、2006年にアメリカで開発されたマウスピース矯正で、現在は大手インプラント企業ストローマンの傘下にあります。
日本ではあまり知られていませんが、アメリカではインビザラインに次ぐNo.2のシェアを誇っており、歯茎をやや覆うほどの大きめのマウスピースが特徴です。
インビザラインと同様に、海外でマウスピースを製作するため薬機法の対象外になります。
メリット |
・全体矯正が可能。 ・症状によっては、インビザラインより費用を抑えることができる。 ・独自のソフトウェアを利用して矯正シミュレーションができる。 ・通院頻度が少なくて済む。 ・大きめのマウスピースのおかげで治療期間が短縮されアタッチメントが少なくて済む。 |
デメリット |
・マウスピースが硬い。 ・光学スキャナーで型を採るため、従来の型採りができない。 ・扱っている医院が多くない。 ・インビザラインと比較すると適応症例は少ない。 ・薬機法対象外。 |
アソアライナー
アソアライナーは日本国内で製作されるマウスピース矯正の代表格です。
日本で製作されるため、歯科技工法における矯正装置に該当し、薬機法の対象になります。
アソアライナーは、厚みの異なる3種類のマウスピース(ソフト:0.5mm、ミディアム:0.6mm、ハード:0.8mm)を用いて、歯を動かしていきます。
アソアライナーは、インビザラインと比較して、費用を抑えて矯正を始めることができますが、前歯を中心とした部分矯正や、軽度の症状にしか適用できないので注意が必要です。
メリット |
・費用を抑えて矯正を始められる。 ・かつては月に1回歯型を採っていたが、現在は3ヶ月から5ヶ月に一回で済む。 ・薬機法の対象。 ・日本国内で製作するので、10日で製作が完了する。 |
デメリット |
・部分矯正のみ。 ・簡単な症例しか扱えない。 |
アクアシステム
アクアシステムはハーバード大学に所属する日本人歯科医師がアメリカで2002年に開発したマウスピース矯正です。
「アクアフレーム」と呼ばれる透明のマウスピースは手作業で製作され、通院のたびに歯型採取(印象採得)を行います。
メリット |
・費用を抑えて矯正を始めることができる。 ・薬機法の対象。 |
デメリット |
・他のマウスピース矯正と比べて通院頻度が多い。 ・軽度の部分矯正が適応症例で、プチ矯正向き。 |
ケースごとにおすすめのマウスピース矯正を紹介
ここまで主要なマウスピース矯正を4種類紹介してきましたが、ケースによっておすすめのマウスピース矯正が異なります。
全体矯正を考えている方は
全体矯正を考えている方には、インビザラインかクリアコレクトがおすすめです。
基本的に両者とも症例に制限はなく、奥歯を含めた全体矯正に用いることができます。
しかし歯科医院によっては、クリアコレクトは軽度の矯正のみに用い、やや重度の症例からは実績のあるインビザラインを用いるように定めているところもあるようです。
症例によってはクリアコレクトで費用を抑えることができる場合もありますが、インビザラインのみが適用可能な場合もあるので、歯科医師と相談して治療の選択を行いましょう。
治療範囲を限定して費用を抑えたい方は
治療範囲を限定して費用を抑えたい方には、クリアコレクトかアクアシステムがおすすめです。
症状によって異なりますが、どちらも部分的に矯正をするのであれば、10万円代から治療を始めることができます。
インビザラインも部分矯正に用いることができますが、部分矯正かつ軽度の症状であれば、クリアコレクトの方が費用を抑えることができます。
前歯を中心とした部分矯正に限定して矯正を行うのであれば、クリアコレクトかアクアシステムを検討してみてはいかがでしょうか。
国産にこだわりたい方は
国産にこだわりたい方には、アソアライナーかアクアシステムをおすすめします。
両者とも国内でマウスピースを設計、製作するため、薬機法の対象になります。
ただし、どちらも全体矯正には向いていないため、国産に限定する場合は前歯を中心とした部分矯正になります。
最終的にアソアライナーかアクアシステムで迷った場合は、費用と通院頻度で判断しましょう。
通院頻度を少なくしたいのであれば、アソアライナーを選択し、費用を少しでも抑えたいのであれば、アクアシステムにしましょう。
信頼性にこだわりたい方は
信頼性にこだわりたい方には、インビザラインをおすすめします。
インビザラインは、1999年にアメリカで誕生してから今日までの約20年間で、800万人をこえる患者さんに利用されてきました。
インビザラインの技術は今でも進化を続け、適応症例も増やしつつあります。
他のマウスピース矯正にはない独自のソフトウェアをによるシミュレーションを、患者さん自身が見ることができるのも、安心してインビザラインを利用できる理由と言えます。
費用は他のブランドと比較して安くはありませんが、実績のあるマウスピース矯正を利用したい方は、インビザラインで矯正を行いましょう。
まとめ
マウスピース矯正にはいくつかの種類があります。
利用するマウスピース矯正を選ぶ時のポイントは、費用、適応症例、通院頻度、治療にかかる期間、薬機法の対象かどうかです。
この記事で取り上げた4種類の主要なマウスピース矯正は、ケースによっておすすめが異なります。
全体矯正を考えている方には、インビザラインかクリアコレクト。
治療範囲を限定して費用を抑えたい方には、クリアコレクトかアクアシステム。
国産にこだわりたい方には、アソアライナーかアクアシステム。
信頼性にこだわりたい方には、インビザライン。
今回の記事で紹介した4つのマウスピース矯正の種類ごとの違いを理解して、自分に合ったマウスピース矯正を選びましょう。
最後になりますが、実はマウスピース矯正の種類を決めることよりも重要なことがあります。
マウスピース矯正の種類よりも重要なのは、矯正を行う歯科医院を選ぶことです。
歯科矯正には、お金と時間がかかります。
信頼できる歯科医院で、自分の納得のいく矯正を行うようにしましょう。
当サイトではマウスピース矯正が受けられるおすすめの医院を紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
この記事の監修者
三上 智彦
経歴
2008年 東京歯科大学歯学部卒業 2009年 東京歯科大学歯学部附属病院臨床研修修了 2012年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野矯正歯科専攻生課程修了 2012年- 千葉県内矯正歯科医院勤務、医療法人社団佑健会勤務
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コメント
日本矯正歯科学会認定医/インビザライン認定ドクター 柏KT矯正歯科 院長。東京歯科大学卒。同大学院の矯正歯科専攻生課程修了。認定医やインビザライン認定ドクターの知識や数千ある治療経験から患者様の最適な治療を提案し、理想のゴールへ一歩でも近づけるような治療を心がけています。