マウスピース矯正で痛いのはどんなとき?対処法も徹底解説
この記事の監修者
藤林 勉
グリーン歯科
2021/8/27
2024/7/18
#マウスピース矯正
マウスピース矯正は、痛みの少ない歯科矯正方法として紹介されることが多いです。
しかし、
「力を加えて歯を動かすのに、本当に痛みは少ないのかな・・・」
「歯科矯正は痛いって聞くけどな・・・」
と、マウスピース矯正中の痛みについて心配でなかなか矯正に踏み切れない方が多いようです。
結論として、マウスピース矯正は痛いと感じることがあります。
そこで、この記事では、「マウスピース矯正で痛いと感じるパターン」とその対処法を解説していきます。
この記事を読むことで、マウスピース矯正での痛みについて正しく理解し、痛みを感じても対処できるようになります。
マウスピース矯正中の痛みについて気になっている方や、現在マウスピース矯正中で痛みを感じている方は、ぜひご覧ください。
マウスピース矯正は痛いと感じることがある
個人差はありますが、「痛くない歯科矯正」といわれることのあるマウスピース矯正でも、痛みを感じることはあります。
なぜなら、マウスピース矯正でも、固定されている歯を動かそうとすると、押し付けられる圧力や引っ張られる力が加わるからです。
力を加えて歯を動かす原理は、マウスピース矯正でもワイヤー矯正でも同じです。
しかし、マウスピース矯正は、コンピュータを用いて歯科医師が細かな治療計画を設計することで、かける力を最小限に抑えて効果的に歯を動かすことを可能としています。
例えば、インビザラインでは、治療開始時に歯型をとり、「クリンチェック」とよばれる独自のソフトウェアが作り出す3Dのコンピュータ画像を用いて、矯正のシミュレーションをおこないます。
シミュレーションによって、現在の歯並びから理想の歯並びまでに必要な歯の動きを可視化できるため、歯に無理な動きをさせることのない、適切な力のかけ方を計画することが可能なのです。
また、矯正器具が着脱可能で、痛みに対処しやすいのもマウスピース矯正のメリットです。
マウスピース矯正は痛みを抑えるように工夫されている歯科矯正ですが、口内に加わる力が痛みを誘発してしまうことがあることを覚えておきましょう。
マウスピース矯正で痛いと感じるパターンと対処法
ここからは、マウスピース矯正で痛いと感じるパターンとそれぞれの対処法を紹介していきます。
歯が動いて痛い
ワイヤー矯正と同様に、マウスピース矯正でも歯が動くときに痛みを感じてしまうことがあります。
なぜなら、歯が動くときに、痛みを感じさせる物質が発生するからです。
歯は、歯槽骨という骨に埋まっています。
しかし、歯と歯槽骨は密接しているのではなく、歯根膜という弾力のある薄い膜が歯と歯槽骨の間でクッションの役割を果たしています。
矯正器具で歯に力を加えると、その力が歯根膜に伝わります。歯が動く側の歯根膜は縮み、反対側の歯根膜は延びます。
そうすると、歯根膜が縮んだ側の歯槽骨は、歯根膜の厚みを保つために骨を溶かし、逆に伸びた側の歯槽骨は新たに骨を作り出します。
そして骨が溶かされたときに、痛みの原因となる物質が発生するのです。
対処法:鎮痛剤(痛み止め)を服用する
痛みがひどい場合は、鎮痛剤(痛み止め)の服用で対処しましょう。
注意点は、「ロキソニン」に代表されるイブプロフェン系の消炎鎮痛剤の服用です。
イブプロフェン系消炎鎮痛剤は、痛みの原因となっている炎症を抑えるために処方されますが、繰り返しの服用により骨の代謝を抑制し、歯の動きを遅する場合があります。
歯科医院によっては、歯の動きに影響の少ない「カロナール錠」などのアセトアミノフェンの鎮痛剤を処方しています。
マウスピース矯正で普段からひどく痛みを感じる場合は、歯科医師に痛み止めについて相談してみましょう。
ただし、歯が動くことによる痛みは自然なものなので、慣れていくことがベストです。
マウスピース交換直後に痛い
マウスピース矯正は、定期的に少しずつ形の異なるマウスピースに交換することで歯を動かしていきます。
そのマウスピース交換直後に痛みを感じることがあります。
なぜならマウスピース交換直後は、現在の歯の位置とマウスピースの目指す歯の位置のズレが大きいため、かかる力が大きくなってしまうからです。
例えば、インビザラインは2週間をめどに新しいマウスピースに交換します。
そのため、2週間の始めは、ズレが大きいため、マウスピースから歯にかかる力が大きいです。
しかし、2週間の終わりごろには歯がマウスピースの形に近づいているため、かかる力も小さくなり、痛みはほとんど感じなくなります。
対処法:前のマウスピースを延長する
前項の「歯が動いて痛い」のように、マウスピース交換直後に感じる痛みは自然なものであることが多いです。
しかし、あまりにマウスピース交換直後の痛みが強い場合は、前のマウスピースを延長するようにしましょう。
なぜなら、歯が次のマウスピースを受け入れる位置まで動いていない可能性があるからです。
1日あたりの装着時間が十分ではなかったりすると、歯が計画どおりに動かないこともあります。
歯が計画的に動いていないと、次のマウスピースが目指す歯の位置と現在の歯の位置に大きなズレがあり、強い痛みを感じてしまうのです。
インビザラインでは、2週間をマウスピース交換のめどとしていますが、それは「2週間経てば、必ず次のマウスピースに進む」ということではありません。
マウスピース交換直後の痛みがあまりに強いようなら、前のマウスピースを延長してみましょう。
延長する期間は、毎朝新しいマウスピースの装着をトライし、装着時の痛みが無くなるか、耐えられそうな痛みに軽減するまでを目安にしましょう。
ただし、1週間ほど経っても新しいマウスピースの装着時に激しい痛みがある場合は、歯科医師に相談することをおすすめします。
装着方法の誤りや著しい装着時間の不足によって計画的に歯が動いていない可能性や、予想されていなかった歯の動きが生じている可能性があります。
同様の理由で、マウスピースを紛失してしまった場合も注意が必要です。
「マウスピースを装着しないといけない」という気持ちから、次のマウスピースを装着し始めてしまうと、大きな痛みにつながってしまう可能性があります。
マウスピースを紛失したら、自分の判断でマウスピースに進むのではなく、歯科医師に相談して、続行や再製作の指示を仰ぐようにしましょう。
食べ物を噛んで痛い
マウスピース矯正中は、食べ物を噛むときに痛みを感じる場合があります。
歯科矯正は歯に力をかけ続けることで歯を動かしていきます。
その間、歯が受ける圧力を和らげる働きをする根元の繊維(歯根膜)が敏感になっているので、痛みを感じやすくなってしまうのです。
特に、ステーキやせんべいなどの硬い食べ物は、噛むときに歯の根元にかかる圧力が大きいため、痛みにつながりやすいです。
対処法:食べ物を細かくする
マウスピース矯正中に食べ物を噛んで痛みを感じるときは、食べ物を細かくしましょう。
食べ物を細かくすれば、強く噛む必要もなくなるので、歯の根元にかかる力を抑えられ、痛みの軽減につながります。
野菜や果物については、切って細かくするだけではなく、スムージーにするのもおすすめです。
また、柔らかい食べ物を積極的に食べることも対処法の1つです。
柔らかい食べ物であれば、細かくしなくても強く噛む必要がないので、噛むときの痛みを軽減することができます。
マウスピース矯正中の食べ物については、「マウスピース矯正中は食事の制限がない?注意点を完全解説」で、より詳しく解説しています。
歯茎が痛い
マウスピース矯正中に、歯茎に痛みが生じることがあります。
マウスピースを装着しているときに端が歯茎に当たっていることが原因である場合が多いです。
対処法:歯科医院でマウスピースを削ってもらう
マウスピースが歯茎に当たって痛い場合は、歯科医院でマウスピースを削ってもらいましょう。
マウスピースはプラスチックでできているため、金属製の矯正器具とは異なり、歯科医院で削って調整することが比較的容易です。
その反面、患者さん自身でマウスピースを削るのには注意が必要です。
マウスピースは削りやすさゆえに、削りすぎてしまうこともあります。
マウスピースを削りすぎると、しっかりと歯にはまらなくなったり、より端が鋭利になって歯茎を傷つけてしまうことにつながります。
マウスピースが当たって歯が痛い場合は、削ることで痛みを軽減できますが、自分で削るのではなく、歯科医院で削ってもらうようにしましょう。
虫歯・歯周病が進行して痛い
マウスピース矯正中に、歯周病もしくは虫歯が進行して痛みを引き起こす場合があります。
ワイヤー矯正とは異なり、矯正器具を外して歯を磨くことができるマウスピース矯正は、歯周病や虫歯のリスクが少ない歯科矯正です。
しかし、食後の歯磨きやマウスピースのクリーニングを怠ると、歯周病や虫歯のリスクが高くなります。
なぜなら、マウスピースは、歯の表面に食べかすや細菌を閉じ込めてしまうからです。
通常であれば、食後に歯磨きをしなくても、唾液や飲み物で歯表面の食べかすは流されていきますが、マウスピースを装着している状態では、歯周辺に水分が循環せず、食べかすが口の中に残り続けてしまいます。
そして、口に残った食べかすに集まった細菌とその代謝物からなる歯垢(プラーク)が、時間を経て石灰化した歯石に変化し、その歯石の周りに細菌が集まり、毒素を出すことが虫歯・歯周病の始まりです。
対処法:虫歯・歯周病の治療を優先する
マウスピース矯正中に、虫歯や歯周病によって痛みを感じている場合の対処法は、矯正を一時的にストップし、治療を優先することです。
虫歯や歯周病によって口内環境が悪化している状態では、歯を動かそうとすると痛みが増大する可能性もあるため、マウスピース矯正を一時中断しなくてはいけません。
そのため、虫歯や歯周病の治療は、矯正計画を狂わせると思われがちです。
しかし、実は矯正を一時中断して早期に虫歯や歯周病を治療することは矯正を計画どおりに進めることにもつながります。
なぜなら、虫歯や歯周病がある程度進行すると、治療によって歯を削る範囲が大きくなってしまうからです。
歯を大きく削って詰め物をすると、歯の形が変わってしまい、矯正開始時に製作したマウスピースがきれいにはまらなくなってしまうのです。
虫歯や歯周病を放置することは、痛みの増大、歯を失うリスクだけでなく、マウスピースの再設計にもつながってしまう可能性があります。
マウスピース矯正中に、痛みの他に、歯茎の腫れや歯の黒い点などに気が付いたら、早めに歯科医師に相談するようにしましょう。
補助器具で痛い
マウスピース矯正の効果を最大限発揮するために、「アタッチメント」という白い樹脂製の突起物を歯に設置することがあります。
しかし、アタッチメントの突起が唇や舌を傷つけて痛いと感じてしまう場合があります。
対処法:矯正用ワックスを利用する
アタッチメントが口の中で痛みを引き起こしている場合の対処法は、矯正用ワックスを使うことです。
矯正用ワックスをアタッチメントに塗ることで、出っ張りを無くし、口内を傷つけることもなくなります。
マウスピースの装着中は、アタッチメントが覆われ、直接唇や下に触れることはありません。
しかし、マウスピースを外してる間にアタッチメントの突起が気になる方は、矯正用ワックスの利用で痛みに対処しましょう。
矯正用ワックスは、矯正を行っている歯科医院やAmazon・楽天で購入することができます。
初めて使用する場合や使用方法に不安がある場合は、歯科医院で購入し、その場で使用方法を教えてもらうことがおすすめです。
まとめ
マウスピース矯正は痛みの少ない歯科矯正として人気ですが、痛いと感じてしまう場合があります。
しかし、マウスピース矯正は患者さん自身で矯正器具を外せるため、痛みがひどい場合はマウスピースを外して痛みから逃れることができます。
ワイヤー矯正は、装着しているワイヤーから歯に強い力が加わり、マウスピース矯正よりも強い痛みを引き起こすことが多く、患者さん自身では矯正器具を外すことができないため、痛みを感じる時間も長くなります。
もし、マウスピース矯正で痛みを感じた場合は、ケースに合わせた対処法を参考にしてみましょう。
対処法を用いても痛みが改善されないときは、歯科医師に相談することをおすすめします。
今回の記事で、マウスピース矯正について不安が解消できた方はもちろん、もう少し話を聞いてみたいという方も、次のステップとして実際に歯科医院でカウンセリングを受けてみませんか?
当サイトではマウスピース矯正が受けられるおすすめの医院を紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
この記事の監修者
藤林 勉
経歴
1981年 日本歯科大学歯学部 卒業 1982年~1983年 鶴見歯科医院 勤務 1984年~1986年 レオデンタルクリニック 勤務 1986年4月 グリーン歯科 開業
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