マウスピース矯正に効果はある?失敗させない方法3選も紹介
この記事の監修者
河村 喜英
公園通り歯科
2021/7/7
2024/7/18
#マウスピース矯正
マウスピース矯正は、痛みの少ない歯科矯正方法としてよく紹介されています。
しかし、
「矯正って金属のワイヤーで歯を縛っているイメージがあるし、痛みの少ないマウスピース矯正に効果なんかあるのか」
と疑いたくなってしまいますよね。
誰しも、効果がない矯正を始めて、お金と時間を無駄にしたくないので、不安になってなかなかマウスピース矯正の決心がつかない方が多くいらっしゃいます。
そこで、この記事では、「マウスピース矯正は効果がある」ということを、説明していきます。
また、市販もしくは通販のマウスピースに「なぜ矯正の効果がないのか」も解説しています。
この記事を読むことで、マウスピース矯正の効果について理解できるだけでなく、その効果を最大限発揮して、矯正を失敗させない方法を知ることができます。
効果のある歯科矯正をお探しの方は必見です。
- 3.3医師の計画に誤りがある
- 4.2アタッチメントを利用する
- 5.3治療計画がないから
- 5.4アタッチメントがないから
- 6まとめ
マウスピース矯正に効果はある
マウスピース矯正は効果があります。
そのように考えられるのは、以下の理由があるからです。
論文でワイヤー矯正と同等の効果が報告されている
マウスピース矯正の効果は論文でも報告されています。
PMCにも収録されている論文にて、2018年にワイヤー矯正と比較したマウスピース矯正装置の効果が検証されています。
PMCとは、アメリカ合衆国の国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の傘下にある、2000年に設立された医学のオンライン論文アーカイブで、今日までに500万以上の論文を収録しています。
PMC収録されている論文はすべて査読(研究者仲間やその分野の専門家による審査)を受けています。
“Both clear aligners and braces were effective in treating malocclusion. Clear aligners had advantage in segmented movement of teeth and shortened treatment duration, but were not as effective as braces in producing adequate occlusal contacts, controlling teeth torque, and retention.”
(参考文献:PMC)
結論として、マウスピース矯正は、歯体移動のような一部苦手とする歯の移動はありますが、出っ歯や八重歯などを含めた不正咬合の治療に関しては、有効な矯正方法であると述べられています。
マウスピース矯正の歯の動かし方
歯科矯正では、歯に適切な力を長時間かけることが理想的とされています。
マウスピース矯正でも、歯に適切な力をかけ続けることが可能です。
歯は、歯槽骨という骨に埋まっています。しかし歯と歯槽骨は密接しているのではなく、歯根膜という弾力のある薄い膜が歯と歯槽骨の間でクッションの役割を果たしています。
矯正器具で歯に力を加えると、その力が歯根膜に伝わります。歯が動く側の歯根膜は縮み、反対側の歯根膜は延びます。そうすると、歯根膜が縮んだ側の歯槽骨は、歯根膜の厚みを保つために骨を溶かし、逆に伸びた側の歯槽骨は新たに骨を作り出します。
時間をかけて骨を溶かし、再生することで歯が動くのが、矯正の仕組みです。
ワイヤー矯正ほど痛みはありませんが、マウスピース装着時に締め付け感があるのは、歯を正しい位置に動かそうとする力がかかっている証拠です。
世界中で多くの人に利用されている
マウスピース矯正は、実際に世界中で数多くの人に利用されている歯科矯正方法です。
マウスピース矯正の代表的なブランドである「インビザライン」だけでも、世界中で1000万人以上に利用されています。
「これまでに世界で1000万人を超える患者様がアライン・テクノロジー社の「マウスピース型矯正装置」による治療を受けられています。(2021年5月時点)」
(引用:インビザライン・ジャパン株式会社)
1999年にアメリカで生まれたインビザラインが、約20年間で1000万人に利用されてきた実績は、マウスピース矯正の効果を証明していると言えます。
どれくらいの期間でマウスピースの効果を感じることができる?
マウスピース矯正の効果は、早ければ2ヶ月くらいで感じることができます。
症状がひどくない場合や、前歯を中心とした部分矯正では、早い時期から前歯部を動かすことができるため、効果を実感しやすいからです。
全体矯正か部分矯正かでも異なりますが、マウスピース矯正にかかる期間は数ヶ月から2年半です。
(マウスピース矯正にかかる期間について詳しく知りたい方は「マウスピース矯正の期間は長い?期間を延ばさない5つのコツ」をご覧ください。)
治療期間が長くかかる重度の乱ぐい状態などでは、先に臼歯部(画像)を動かしてスペースを作ってから、動きのわかりやすい前歯部を動かすので、マウスピース矯正の効果を実感するのにも時間がかかってしまうかもしれません。
早いうちから前歯を動かすことができると、2ヶ月くらいでマウスピース矯正の効果を実感することができるでしょう。
マウスピース矯正の効果が感じられない3つのパターン
マウスピース矯正は効果のある歯科矯正方法ですが、効果が感じられないパターンが3つあります。
1日20時間以上マウスピースを装着していない
マウスピース矯正では、マウスピースを1日20時間以上装着していないと効果が感じられません。
なぜなら、マウスピースを1日20時間以上装着していないと計画的に歯を動かすことができないからです。
マウスピース矯正では、1日に20時間以上マウスピースを装着することで、1週間に約0.25mm、1ヶ月で最大約1.0mm歯を動かすことができます。
1日に20時間以上装着していないと、歯に十分な力がかからないので、マウスピース矯正の効果が得られなくなってしまいます。
マウスピース矯正の適応症例ではない
矯正前の症状がマウスピース矯正の適応症例でない場合は、マウスピース矯正の効果を感じることが難しくなります。
適応症例でない場合は、マウスピースを装着しても適切に歯に力をかけられずに歯が動かなかったり、そもそもマウスピース矯正が苦手としている歯の動かし方をしなければいけなかったりするからです。
具体的に、以下の症例ではマウスピース矯正が推奨されない可能性があります。
・抜歯をしなくてはいけない症例
・乳歯が生えそろう6歳までの時期(乳歯列期)、永久歯に生えかわる13歳ごろまでの時期(混合歯列期)で骨格の成長などの予測が困難な症例
・骨格性の問題がある症例
(*参考:公益社団法人 日本矯正歯科学会 アライナー型矯正装置による治療指針)
抜歯をしなくてはいけない症例は、歯を大きく動かさなくてはいけないのでマウスピース矯正が適さない可能性があります。
しかし、近年ではワイヤー矯正と併用することでマウスピース矯正の適応症例を増やすことも可能となっています。
自分の歯並びにマウスピース矯正を適用できるか心配な方は、まず歯科医院に相談してみましょう。
医師の計画に誤りがある
医師の治療計画に誤りがあると、マウスピース矯正の効果を感じられない可能性があります。
マウスピース矯正では、3Dスキャンやソフトウェアを使って治療計画を立てていきますが、コンピュータを使っても計画を立てるのは歯科医師です。
計画が誤っていると、マウスピースを装着しても歯に適切に力を加えることができないので、歯が正しい位置に動いていくことはありません。
マウスピース矯正で効果を感じるためには、患者さんの歯の状況を正しく把握して治療計画を立てる歯科医師の技術が必要になります。
マウスピース矯正を失敗させない方法3選
歯科矯正方法として有効なマウスピース矯正ですが、まれに「失敗した」と感じてしまう方がいるようです。
それでは、マウスピース矯正を失敗させないためにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは、マウスピース矯正を失敗させない方法3選を紹介します。
また、マウスピース矯正の失敗につながる原因や失敗を防ぐコツについては、「マウスピース矯正に失敗はある?後悔しないためのコツを紹介」も合わせてご確認ください。
1日20時間以上マウスピースを装着する
マウスピース矯正を失敗させないために、最も重要なことは1日20時間以上マウスピースを着用することです。
マウスピース矯正では、1日20時間以上マウスピースを装着することで、継続的に歯に力を加えて歯を動かしていくからです。
マウスピース矯正はワイヤー矯正と異なり、患者さん自身で矯正器具の着脱が可能なので、意識して装着時間を守ることが重要です。
20時間というと1日のほとんどです。
食事と歯磨きのとき以外はマウスピースを装着する習慣づけを行いましょう。
アタッチメントを利用する
マウスピース矯正の効果を最大限発揮するために、「アタッチメント」という白い樹脂製の突起物を歯に設置することがあります。
アタッチメントは、マウスピースを歯によりしっかりと固定することが主な役割で、マウスピースから歯にかかる力を細かく調整ができるようになります。
歯にかかる力を細かく調整することで、歯を目的の場所まで精密に動かしていくことができるのです。
アタッチメントは、外れないようにある程度強く設置されますが、歯の表面に付いているため、外れてしまうことがあります。
アタッチメントが外れてしまった場合は、なるべく早く歯科医院で再度設置してもらうことが推奨されます。
歯科医師の判断でアタッチメントを利用することになったら、それはマウスピース矯正を効果的に進める手段としてとらえましょう。
保定期間にリテーナーをしっかり装着する
マウスピース矯正を失敗させないためには、保定期間にしっかりとリテーナーを装着する必要があります。
なぜなら、リテーナーを着用しないとせっかく動かした歯が後戻りしてしまうからです。
歯科矯正では、実際に歯を動かす期間である「矯正期間」の後に、歯に新しい位置を覚えさせるための「保定期間」があります。
保定期間では、歯に「リテーナー」と呼ばれる装置をつけることで骨と繊維に新しい歯の位置を記憶させます。
矯正期間直後は、マウスピースと同じく1日20時間以上の装着が必要ですが、保定期間が6ヶ月まで進めば半日、1年半ほど経てば就寝時のみの装着というように、リテーナーの装着時間は短くなっていきます。
動かした歯をリテーナーで固定して後戻りしないようにすることで、マウスピース矯正の失敗を防ぐことができます。
市販のマウスピースに矯正の効果がない理由
近年では、Amazonや楽天といった通販サイトで、市販のマウスピースを見かけることがあると思います。
一見、市販のマウスピースは、矯正の費用を抑えるための有効な手段のように見えますよね。
しかし、市販のマウスピースには矯正の効果がないので、注意が必要です。
ここからは、市販のマウスピースに矯正の効果がない理由を説明していきます。
歯を動かすことを目的としていないから
そもそも多くの市販マウスピースは、歯を動かすことを目的としていないので、矯正の効果はありません。
主に市販のマウスピースが目的としているのは、「睡眠時の歯ぎしり防止」です。
歯ぎしりは、自分の歯どうしがこすれることで、歯表面のエナメル質が欠けて知覚過敏を引き起こしたり、圧力により顎関節症を引き起こしたりします。
睡眠時は無意識状態なので、歯にマウスピースをかぶせて歯が直接こすれるのを防ぐのです。
「ナイトガード」という名前で販売されることもある市販マウスピースですが、歯ぎしりを防ぐことが目的なので矯正の効果はありません。
オーダーメイドでないため、隙間が多いから
市販のマウスピースでは歯との間に隙間が多いのも、矯正効果がない理由です。
マウスピースと歯の間に隙間があっては、歯に適切な力がかからず、動かすことができないからです。
市販のマウスピースは基本的にオーダーメイドではなく、S・M・Lといったサイズから選ぶようになっています。
どれだけ装着時にピッタリとマウスピースがはまっている感触があっても、一人一人に合わせて作られていないので、隙間ができます。
一方、歯科医院の指導で行うマウスピース矯正では、患者さんの歯型を採って、マウスピースと歯の間に隙間ができないようにします。
マウスピースで矯正をするなら歯科医院の管理の下で、オーダーメイド品を装着するようにしましょう。
治療計画がないから
市販のマウスピースに効果がない理由の一つが、治療計画がないことです。
治療計画がないと、歯を動かしたい方向に動かすことができません。
歯科医師の下で行うマウスピース矯正では、治療開始時に専門のソフトウェアを用いてシミュレーションを行うだけでなく、医師が患者さんの現状から治療の進み方を予測して歯の動かし方を計画します。
そしてその計画に基づいて、マウスピースを交換しながら少しずつ歯を動かしていきます。
また、定期的に通院をすることで、歯が予測していなかった動きをしても、計画を立て直して適切に歯を矯正していくことができます。
市販のマウスピースでは、治療計画が全くないので、マウスピースを交換することもありません。
形を調節できる市販のマウスピースであっても、計画に基づかないで無理に歯を動かそうとすると、逆に歯を痛めてしまうこともあります。
マウスピース矯正は、歯科医師の治療計画に沿って、矯正進度によってマウスピースを交換していくことで歯が動くことを覚えておきましょう。
アタッチメントがないから
アタッチメントがないことも、市販のマウスピースに矯正効果がない理由です。
なぜならアタッチメントは、マウスピースから歯に適切に力を加えるのに重要な役割を果たしているからです。
歯科医師の下で作製したオーダーメイドのマウスピースであっても、歯との間にわずかな隙間ができる場合があります。
アタッチメントをつけることで、マウスピースと歯の密着度を上げて、マウスピースから歯によりしっかりと力が加わるようにします。
アタッチメントは、患者さんの歯とマウスピースの形を観察しながら医師が設置していきます。
市販のマウスピースは歯との間に隙間が多いだけでなく、歯科医師がアタッチメントを設置することないので、歯に矯正力が加わることはありません。
まとめ
マウスピース矯正はワイヤー矯正より目立たず、痛みが少ないことで、その効果を疑う方も少なくありません。
しかし、マウスピース矯正は効果的な治療であることが報告されているだけでなく、世界でも900万人以上に利用されています。
早ければ、2ヶ月程度で効果を感じることができます。
逆にマウスピースの装着時間を守っていなかったりすると、効果を感じることができません。
矯正を失敗させないためには、1日20時間以上マウスピースを装着したり、リテーナーをさぼらないことが大切です。
市販のマウスピースは、価格は安いですが、矯正の効果がないことも覚えておいてくださいね。
今回の記事で紹介したマウスピースの効果を理解して、お金と時間を無駄せずに歯並びをきれいにできる歯科矯正を選びましょう。
少しでもマウスピース矯正に興味を持った方は、まずは歯科医院でカウンセリングを受けてみませんか?
当サイトではマウスピース矯正が受けられるおすすめの医院を紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
この記事の監修者
河村 喜英
経歴
1999年 福岡歯科大学歯学部卒業 1999年〜2012年 複数の歯科医院勤務 2012年 山口県山陽小野田市 公園通り歯科 開業
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